1.はじめに
CO₂をはじめとする温室効果ガスにより気候変動(地球の温暖化)が進むほど、自然災害、異常気象、生物多様性の損失など、私たち人間を含む地球上の生物の暮らしや経済活動への悪影響が懸念されます。また気候変動を抑えるために国際的に温室効果ガス排出削減に向けた取組みが拡大しており、このような取組みもまた経済活動に影響をもたらす可能性があります。当社は、TCFDの提言に基づき、気候変動がもたらすリスクや機会について開示を行うとともに、引き続き温室効果ガス排出抑制に向けた取組みを継続してまいります。
2.ガバナンス
・当社は、CO₂排出削減を含め、サステナビリティ課題への対策を推進するために、代表執行役社長以下のメンバーで構成されるサステナビリティ委員会を設置し、同委員会の下に各重要課題に対処する作業部会を設置しております。
・経営の管理監督機関である取締役会には、サステナビリティ委員会が定期的な報告を行い、サステナビリティ委員会は各作業部会から報告を受け、対応についての議論を重ねております。
・各作業部会に関しては、各重要課題に関連する部門の部門長を部会長に任命し、各部会で選任した実務リーダーを中心に、実際の取組みを推進しております。
【サステナビリティ推進に向けた体制】
【サステナビリティ委員会議事要旨(2022年)】
開催日 |
報告部会 |
議事要旨 |
2月10日 |
CO₂排出削減・資源循環 |
・GHG算定の進捗の報告、今後の取組みについての意見交換 |
3月17日 |
D&I |
・D&Iスローガン策定と取組み予定内容の報告 |
3月17日 |
サステナブル調達推進 |
・サステナブル調達方針の作成方針と進捗報告 |
5月11日 |
環境配慮型商品 |
・環境配慮型商品に関するユーザーヒアリング結果、商品情報整理・ユーザーへの情報提供の方針(専用サイトの開設)の報告 |
7月20日 |
CO₂排出削減 |
・2020年GHG算定結果報告・省エネ法対応届出内容の報告・笠間DC・茨城中央SC電力の非化石化の共有 |
9月13日 |
D&I |
・D&I社員意識調査の結果共有、休業・休暇に関する新制度相談 |
9月13日 |
サステナブル調達推進 |
・サステナブル調達方針案のレビュー、完成に向けた今後のスケジュール報告 |
11月16日 |
環境配慮型商品 |
・認証ラベル7項目のファセット実装と専用サイトのリリース報告 ・エコロジープロダクト定義の方針・スケジュールの共有 |
【取締役会への報告内容(2022年)】
開催日 |
報告内容 |
3月29日 |
・サステナビリティに関する2021年の取組みの振り返りと重要項目についての2022年の取組み予定 |
11月17日 |
・サステナビリティ重要項目の取組みの進捗 ・TCFD提言に基づく開示の内容 |
3.戦略
当社では、21世紀末における世界の平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃未満に抑える「2℃未満シナリオ」と4℃以上となる「4℃シナリオ」における事業・財務への影響を検討しております。
・2℃未満シナリオでは、現状の延長線上の対策では温室効果ガス排出抑制の実現が困難であるため、より積極的な対策として炭素税導入・リサイクル規制の大幅強化等が行われると想定しております。その結果、同シナリオでは、温室効果ガスの排出に関係する原材料やエネルギー価格が高騰する可能性が高くなる一方で、再生可能エネルギーが一層普及していくことを想定しております。
・一方で、4℃シナリオでは、温室効果ガス排出抑制に向けた大幅な規制の強化はないため、再生可能エネルギーの普及等が限定的である一方、温室効果ガス排出が十分に抑制されず、台風・洪水等の異常気象による被害が拡大することを想定しております。
・当社は海外に子会社を有しておりますが、株式会社MonotaRO単体が売上の95%以上を占めているため、現時点では、主に株式会社MonotaRO単体(日本国内)での戦略を検討しております。
物理的リスク
(※ 2050年頃におけるリスクを想定)
【サマリー】
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リスク評価 |
戦略 |
慢性リスク |
・平均気温の上昇や猛暑による労働環境対策コストや人員確保のための管理コストの上昇 - 暑さ対策の設備や空調電気代の増加 - 欠勤増によるスタッフ募集コストの増加 |
・オペレーション自動化によるリスクの低減 |
急性リスク |
・風水害による物流拠点の操業停止・取扱い商品の入荷や配送の遅延 |
・複数地域への拠点分散によるリスク分散 ・風水害の知見共有・設備対応 |
<説明>
慢性リスク:労働環境対策コストや人員確保のための管理コストの上昇
・当社は2022年現在、物流施設で2000人以上のスタッフの協力によって、お客様にお届けする商品の入出荷を行っています。平均気温の上昇・猛暑日・酷暑日の増加によって、特に、物流倉庫における労働環境対策コストの上昇が予想され、また欠勤増による人員管理コストの増加が予想されます。 - 2020年から2022年にかけての実績値として当社の物流倉庫におけるアルバイト・派遣社員を含めたスタッフにかかる人件費の売上比率は2.81~3.12%ですが、この比率を前提に、例えば欠勤増に備えて10%の追加人員を手当てするとすれば、経費は売上比で0.28~0.31%上昇します。
・当社は、気温上昇に伴う労働環境の悪化を防ぎつつ、物流オペレーションの自動化を進め、気温上昇によるリスクの低減に努めてまいります。
<説明>
急性リスク:風水害による物流拠点の操業停止
・気候変動により台風等の風水害が増加した場合、物流拠点の操業停止、取扱い商品の入荷や配送の遅延等のリスクが存在します。但し、当社の主要な物流センターは、現状において、洪水による浸水リスクのある地域には所在しておらず、リスクの低減を図っております。
・当社は、風水害の知見共有・設備対応を図りつつ拠点配置を進め、また拠点を関西・関東に分散することによって、リスクの分散を図ってまいります。
移行リスク
(※ 2030年におけるリスクを想定)
【サマリー】
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リスク評価 |
戦略 |
政策 |
・カーボンプライシングに関連したエネルギー調達コスト増 |
・オペレーションにおける省エネを考慮した生産性の向上 ・非化石由来エネルギーの調達、太陽光発電設備導入の検討 |
技術 |
・脱炭素・省エネに対応した設備導入の遅れ、対応不足 ・脱炭素・省エネを踏まえたプライベートブランド商品開発の難度上昇 |
・技術動向の把握、導入ノウハウの強化 ・環境関連技術に関するプライベートブランド商品開発力の強化 |
市場 |
・脱炭素の取組み遅れによる顧客離れ ・化石燃料由来商品の忌避による該当商品の売上減 |
・低炭素・省エネの取組みの着実な推進 ・環境配慮型商品の展開強化 |
評判 |
・脱炭素の取組み遅れによる社会的非難、長期投資家の信頼喪失 |
・低炭素・省エネの取組みの着実な推進 ・TCFDに沿った適切な開示 |
<説明>
・カーボンプライシング関連 - 主に2℃未満シナリオにおいては、炭素税等のカーボンプライシング制度の導入が想定され、当社における調達電力の非化石由来エネルギーへの転換が進まない場合、カーボンプライシングによる追加コストが発生するリスクがあります。
- 2020年から2022年にかけて当社が支出した電気料金の売上比率の実績値は0.09~0.15%ですが、カーボンプライシング制度が導入された場合、上記電気料金との見合いで3割強コストが上昇する可能性があります(炭素価格については国際エネルギー機関(IEA)の2030年時点の想定に基づき、130 USD /t-CO₂とし、1USD = 135円で試算)。
・当社は、顧客の需要動向を注視し、需要に応じた品揃え・在庫の入替えを行っていく方針であり、化石燃料由来商品の忌避によるリスク影響を抑える体制を構築してまいります。
・一方で、当社の脱炭素の取組みが遅れることにより、顧客離れや長期投資家の信頼を喪失することがリスクであることを認識したうえで、今後、脱炭素に向けた取組みを推進してまいります。
機会
【サマリー】
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機会 |
戦略 |
製品・サービス |
・環境配慮型商品の需要拡大 |
・環境配慮型商品の展開強化 ・環境関連技術に関するプライベートブランド商品開発力の強化 |
市場 |
・異常気象による防災・災害復旧ニーズの拡 大 ・熱中症対策用品、空調資材商品等の環境改 善商品の売上拡大 |
・防災・災害復旧への商品の供給 ・需要に応じた熱中症対策用品、環境改善商品の供給 |
資源効率性 |
・輸送効率化によるコスト削減 |
・需要地・拠点間の距離、コストを計算した最適な輸送(出荷)指示 |
エネルギー源 |
・化石燃料への依存度の低減 |
・再生可能エネルギーの導入推進(非化石由来エネルギーの調達、太陽光発電設備導入の検討) |
<説明>
・当社は顧客の需要を的確に捉え、環境配慮型商品の展開や、防災・災害復旧商品の適時の供給を行ってまいります。
・またオーダーマネジメントシステム(OMS)を活用し、需要地・拠点間の距離、コストを計算した最適な輸送(出荷)指示を行うことで、資源の効率的な活用を進めてまいります。
4.リスクマネジメント
・当社は、リスク担当執行役を任命、リスクマネジメント室を設置し、全社的なリスクマネジメント状況をモニタリングし、必要な支援を行う体制を構築しております。
・気候変動に関するリスクに関しても、サステナビリティ委員会への報告内容がリスクマネジメント室・監査委員会に連携され、リスクの特定とそれへの対策の状況がモニタリングされる体制をとっております。
・当社は気候変動に関するリスクを、外部専門家の知見も生かしつつ、シナリオ分析を行った上で、経営陣を含む関係者の議論を経て特定・整理し、取締役会に報告しております。
5.指標・目標
指標
【当社のCO₂排出量(t-CO₂)】
スコープ |
2020年 |
2021年 |
Scope 1 |
10 |
2 |
Scope 2 |
2,687 |
3,919 |
合計 |
2,697 |
3,921 |
※2021年は、事業の拡大に伴う出荷量の増加に加え、茨城中央サテライトセンターの稼働開始により、2020年に比べてScope2におけるCO₂排出量が増加しております。
目標
・下記施策により、Scope1及び2に関して、2030年までにCO₂排出絶対量を2020年比で50%削減することを目標に取組みを進めてまいります。 - 当社は2023年3月現在、自社物件である笠間DC・茨城中央SCで使用する電力につきまして、トラッキング情報が付与された非化石証書の購入により実質再生可能エネルギーに切り替えております。
- 当社がテナントとして入居する猪名川DCに関しましても、非化石証書の購入により、実質再生可能エネルギーに切り替えることを検討しております。
- 今後自社物件として稼働させる物流設備に関しましても、自社で行う太陽光発電の検討を含め、再生可能エネルギーで電力を調達するための施策を進めてまいります。
・COP26(グラスゴー気候合意)では21世紀末における世界の平均気温の上昇を「+1.5℃」に抑えるために、
世界のCO₂排出量を「2030年に2010年比45%削減」「2050年頃までに実質ゼロ」にする必要があるとの確認
がされております。この世界的目標の実現に向け、当社は、Scope1及び2に止まらず、Scope3(バリュー
チェーンの上下流におけるCO₂の排出量)に関してもCO₂排出削減の取組みが必要であることを認識しており
ます。当社のScope3における主な排出は、当社が販売する工場扇等の電力機器関連商品の使用と当社が販売
する商品の製造における排出で占められております。当社はこれらのカテゴリーにおける排出量削減に向け
た目標を定めるべく、実用的なCO₂排出量計測モデリングの策定と開示方法について検討を進めてまいります。
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(2023年03月29日 現在)